相続登記の種類
相続登記には、大きく①法定相続分による相続登記、②遺産分割協議による相続登記、③遺言による相続登記の3種類があります。
法定相続分による相続登記(共有相続登記)
相続が発生すると、相続財産はいったん相続人全員の共有となり、不動産も各自の相続分がその共有持ち分となります。これを「遺産分割前の共有」と言います。
この段階でも、相続を原因とする所有権移転の共有登記をすることはできます。
例えば、実家の所有者であったAさんが亡くなり、相続人が妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの場合、各自の相続分は妻Bさん1/2、長男Cさん1/4、長女Dさん1/4となります。
この段階で遺産分割協議をせずに、相続登記をすると、実家は妻Bさん(持分1/2)、長男Cさん(持分1/4)、長女Dさん(持分1/4)の共有となります。この共有相続登記は、相続人の一人が単独で申請することができ、また遺産分割協議書も必要とはされていないことから、協議がまとまらない、あるいは協議をするのが面倒な場合などに行われることがあります。
しかし、不動産の共有は相続における禁じ手とされており、いざ実家を売却しようにも共同相続人全員の同意が得られず売却できない、といった後のトラブル発生の原因ともなりますので、極力避けるべきです。
- 遺産分割協議を省略できる
- 不動産の売却・建替え・増改築や抵当権等の担保権を設定するには共有者全員の同意が必要となり、共有者の一人でも反対すると不動産を処分することができなくなる
- 相続人の中に借金をしている者がいると、その者の債権者から差し押さえをされる危険性がある
- 共有者に相続が発生すると、権利関係が複雑になる
遺産分割協議による相続登記
遺産分割協議とは、「誰が」「どの財産を引き継ぐか」を、相続人全員で決める話し合いのことを言います。この遺産分割協議は相続人全員の意思の一致により成立する手続きであるため、相続人の一人でも欠けた遺産分割協議は無効となります。また、相続人の中に未成年者や認知症の方等がいる場合は、特別代理人や後見人の選任が必要となります(詳しくは「遺産分割協議のルール」を参照してください)。
遺産分割協議では、相続人全員の合意があれば、法定相続分とは異なる遺産分割を行うことができます。
そのため、多くのケースでは相続人のうちの一人が単独で不動産を取得する内容で協議が成立することになります。もちろん、法定相続分とは異なる割合で共有することもできますが、不動産の共有は問題の先送りとなりますのでお勧めできません。不動産以外にめぼしい財産がない場合は、不動産を共有するのではなく、売却して、その売却代金を相続分に応じて分配するか(換価分割と言います)、あるいは不動産を全て取得する相続人を一人決めて、その方が他の相続人の方に対して相続分に相当する金銭を支払うか(代償分割と言います)、いずれかの方法によるのが得策です。
- 相続人全員で遺産分割協議をしなければならない
- 遺産分割協議で相続人のうちの一人が単独で不動産を所有することにすれば、その後、不動産を売却する場合や担保権を設定する場合などの手続きをスムーズに進めることができる。
- 相続人全員の同意があれば、遺言とは異なる内容の遺産分割をすることもできる
遺言による相続登記
遺言書が残されている場合、原則として遺言書の内容に従って遺産分割をすることになります。ただし、相続人全員の合意があれば、遺言書とは異なる遺産分割を行うことは可能です。
この遺言書が自筆で書かれた遺言書(自筆証書遺言)など公正証書遺言以外の場合には、遺言書を保管していた人や、遺言書を発見した相続人が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書を提出して、開封および検認をしてもらわないといけません(封がされていない遺言書はそのままの状態で提出します)。これは、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きであり、また遺言書の存在を相続人その他利害関係人に知らせる目的もあります。検認を怠ったたり、家庭裁判所以外で封印のある遺言書を勝手に開封した場合には、5万円以下の過料に処せられます。また検認の済んでいない遺言書では相続登記や預貯金等の名義変更などの手続きが行えませんので、注意が必要です。
- 遺産分割協議を省略できる
- 公正証書以外で作成された遺言書の場合は、家庭裁判所の検認を経なければならない