韓国籍の方(在日韓国人)の相続手続き |大阪 はる司法書士事務所
更新日: 2022年1月6日
在日韓国人の方が亡くなられ、相続手続きを進める上で、「どこの国の法律が適用されるのか」、「相続人には誰がなるのか」、「相続は放棄できるのか」、「放棄できるにしても、誰まで相続放棄をすればいいのか」、「日本にある不動産の相続はどうすればいいのか」といった様々な疑問や問題が生じてきます。
日本民法と韓国民法では相続人の範囲や相続分などに違いがあるため、誤って手続きを進めてしまうと、相続手続き自体がうまくできなくなります。ここでは韓国籍の方の相続についての基礎知識をご説明します。
韓国籍の方の相続手続きにはどこの国の法律が適用される?
外国籍の方の相続手続きを進める上で注意すべき重要な事項の一つに準拠法があります。
準拠法とは、国際的な私法関係(相続や親族、契約など)を処理するにあたって、どこの国の法律が適用されるかを決める法律です。
日本においては「法の適用に関する通則法」(以下、「通則法」という)が、準拠法を定める法律となります。この通則法によれば、相続の準拠法は「被相続人の本国法による」(通則法36条)とされ、韓国の国際私法49条1項にも、「相続は死亡当時の被相続人の本国法による」と定められていることから、在日韓国人の相続手続きは、韓国民法の規定に従って進めるのが原則となります。
なお、韓国の国際私法49条2項には、遺言により被相続人の常居所がある国家の法を指定したときは、常居所のある国の法律を適用して相続手続きを進めることができるとされています。
具体的には、被相続人が遺言の中で「自分の相続について日本法を適用する」と記載し、かつ亡くなるまで日本に居住していれば、日本の民法を適用して、相続手続きを進めることができるわけです。
※常居所とは、事実上の生活の中心で一定の期間持続した場所のことで、適法に5年以上継続して滞留している場合には、その国に常居所があるものとみなすとされています。
韓国籍の方の相続には、どこの国の法律が適用される?
原則:韓国民法が適用される。
例外:遺言書に「私の相続手続きについては日本法を適用する」との記載があれば日本民法が適用される。
なお、被相続人が生前に帰化されていたときは、日本民法が適用されます。
韓国籍の相続手続きの注意すべきポイント
①韓国民法では、日本民法よりも、相続人の範囲が広いため、相続人の確定は慎重に行う必要がある
誰が何を相続するかは、遺言があればその内容に従い、遺言がなければ、相続人全員の話し合いにより決定することになります。この話し合いを「遺産分割協議」といい、相続人の一人でも欠く遺産分割協議は無効となりますので、注意が必要です。韓国民法では、下記の点で日本民法と異なります。
- 子全員が相続放棄をすれば孫が相続人になる。
- 配偶者がいれば兄弟姉妹は相続人にはならない。
- 子や兄弟姉妹の配偶者も相続人になる場合がある。
- 甥姪の子が相続人になる場合がある。
- いとこや叔父叔母が相続人になる場合がある。
②相続人の調査に時間がかかる。
日本籍の相続では、誰が相続人になるかは、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)を収集することで、調査をすることができます。
韓国では、2007年12月31日に戸籍制度が廃止され、これに代わり家族関係登録簿制度が創設されましたが、2007年12月31日以前に存在した戸籍は除籍謄本として保管されていますので、除籍謄本と家族関係登録簿を利用すれば、相続人が誰かを確定することができます。
ただし、韓国戸籍には①韓国に出生申告をしていないと、戸籍には記載されない。②韓国の本籍地(登録基準地)がわからないと戸籍は発給されない。③兄弟姉妹の委任状では、被相続人の分家後の除籍や家族関係登録簿を取得することができない(例外あり)。④被相続人の子であっても、韓国に出生申告がされていないと、韓国の戸籍だけでは親子関係が証明できないので、発給には別途書類や手続きが必要となる、などの問題もあり、相続人を確定するための書類の収集に時間がかかります。
③韓国戸籍には不備が多い。
被相続人の出生から死亡までの連続する韓国戸籍(除籍謄本・家族関係登録簿)を無事取得することができても、子が記載されていない、前妻の子が後妻の子として登録されている、妻が配偶者として登録されていない、死亡の記載がない、帰化(国籍喪失)の記載がない、生年月日が違う、性別が違うなどの不備も多く、取得した韓国戸籍だけでは相続手続きが進められないことも少なくありません。この場合は、外国人登録原票や戸籍届出書記載事項証明書などを収集し、相続人であることを証明する必要があります。
このように韓国籍の相続では、誰が相続人になるかを正確に把握し、戸籍に不備がある場合には、相続人であることを証明する書類として何を収集すべきかが、相続手続きを進めていく上で注意すべきポイントになります。では、まず、韓国籍の相続では、誰が相続人になるか確認していきます。
韓国民法による相続人の範囲と相続順位
日本民法と同様、韓国民法でも配偶者は常に相続人となりますが、日本民法とは異なり、直系卑属や直系尊属がいない場合には、配偶者は単独で相続人になることができます。
韓国民法が規定する相続順位は、第1順位が直系卑属と配偶者、第2順位が直系尊属と配偶者で、直系卑属も直系尊属もいなければ、配偶者が単独で相続人となります。そして配偶者もいない場合は、兄弟姉妹が第3順位の相続人となり、兄弟姉妹もいないときは、4親等以内の傍系血族(叔父叔母やいとこなど)が相続人になります。
相続順位
韓国民法 | 日本民法 | |
---|---|---|
第1順位 | 直系卑属 | 子 |
第2順位 | 直系尊属 | 直系尊属 |
第3順位 | 兄弟姉妹 ※被相続人に配偶者がいれば相続人にはならない。 |
兄弟姉妹 |
第4順位 | 4親等以内の傍系血族 | なし |
配偶者の取り扱い
韓国民法 | 日本民法 |
---|---|
・常に相続人になる。 ・直系卑属や直系尊属がいない場合は、単独で相続人となる。 |
・常に相続人になる。 ・直系卑属や直系尊属がいなくても、兄弟姉妹がいれば、兄弟姉妹とともに相続人となる。 |
直系卑属・直系尊属・4親等以内の傍系血族
祖先から子孫へと直線的につながる血族のことを「直系血族」といい、そのうち、自分よりも前の世代に属する者を「直系尊属」、自分よりも後の世代に属する者を「直系卑属」といいます。
これに対し、傍系血族とは共通の始祖から分かれた血族のことで、共通の始祖である父母から分かれた兄弟姉妹、祖父母から分かれた叔父叔母、いとこなどが含まれます。
韓国民法で第1順位の相続人となるのが、子、孫、曾孫、玄孫からなる直系卑属です。
第2順位の直系尊属には、父母、祖父母、曾祖父母、高祖父母が含まれます。
第4順位の4親等以内の傍系血族には、叔父叔母、いとこ、大叔父、大叔母がいます。
おさらい:相続人の範囲と順位における韓国民法と日本民法との違い
①配偶者は常に相続人となるが、韓国民法では配偶者が単独で相続人となる場面が想定されている。
②韓国民法では、被相続人に配偶者がいれば兄弟姉妹は相続人にはならない。
③韓国民法では、子の配偶者も相続人になる場合がある。
④韓国民法では子全員が相続放棄をすれば、孫が相続人になる。
⑤韓国民法では、兄弟姉妹の配偶者や孫が相続人になる場合がある。
⑥韓国民法では叔父や叔母、いとこなどが相続人となる場合がある。
韓国民法における第1順位 直系卑属
韓国民法では「直系卑属」を第1順位の相続人と規定していますが、これは、子と孫がいる場合に、孫が子と共同して相続人となることを意味するものではありません。
具体例でみていきましょう。
被相続人Aさんには、配偶者Bさんと、子CさんとDさん、そして孫Fさんがいます。この場合、子CさんとDさんが優先して相続人となり、孫Fさんは相続人とはなりません。
したがってAさんが亡くなれば、配偶者のBさんと、子CさんとDさんが相続人になります。
韓国民法で孫が相続人となる場合
韓国民法で、孫(子以外の直系卑属)が相続人となるのは、主に ①子が先に死亡している場合と、②子全員が相続放棄をした場合 です。
①子が先に死亡しているときは、孫は子を代襲して相続人になります(代襲相続)、他方②子全員が相続放棄をしたときは、孫は本来の相続人として本位相続することになります。
なお、子全員が死亡しているときは、孫が代襲相続するのか、あるいは本位相続するのかとでは、相続分に違いがでることがあります。
①子が先に死亡している場合
子どもであるDさんが被相続人Aさんよりも先に亡くなっていたときは、Dさんの子である孫のFさんがDさんに代わって相続人となります。
これを代襲相続といいます。代襲相続については後ほど説明しますが、韓国民法では子の配偶者も代襲相続人となる点が日本民法との大きな違いとなります。
したがって、本ケースでは、配偶者のBさんと子Cさんだけでなく、Dさんの代襲相続人として配偶者のEさんと孫のFさんが相続人になります。
【比較】日本民法では子の配偶者は代襲相続人にはなりませんので、Aさんが日本籍であれば、Bさん、Cさん、Fさんが相続人になります。
②子ども全員が相続放棄をした場合
相続放棄は韓国民法上も代襲原因とはなりませんが、日本の民法とは異なり、子ども全員が相続放棄をした場合は、孫は固有の権利として本位相続することになります。
日本民法では、子全員が相続放棄をすれば、第2順位の直系尊属(父母・祖父母)が相続人になりますが、韓国民法では、孫などの直系卑属全員が相続放棄をして初めて第2順位の直系尊属に相続権が移ることになります。
上図では、子CさんとDさんが相続放棄をしたので、孫のFさんが第1順位の相続人となります。このとき、配偶者Bさんが相続放棄をしなければ、BさんとFさんが相続人となり、Bさんが子どもたちと一緒に相続放棄をしていれば、孫Fさんのみが相続人となりますので、相続をしたくないときは、CさんとDさんの相続放棄が受理されてから3ケ月以内に相続放棄をする必要があります。
本位相続と代襲相続とでは相続分が異なる
子ども全員が先に死亡していた場合も、孫に相続権が移ります。
これについては、孫が固有の権利として相続人となる「本位相続説」と、子を代襲して孫が相続人になる「代襲相続説」の二説がありますが、韓国の大法院(最高裁判所)判決では、後者の「代襲相続説」が採用されています。
いずれの説によっても、子に配偶者がいる場合は、孫は本位相続ではなく、子の配偶者とともに代襲相続するとされています。
ただし、子の配偶者が死亡や離婚等により既にいない場合は、本位相続説と代襲相続説とでは、孫の相続分に違いが出ます。
例えば、下図では、被相続人Aさんの孫のFさん、Gさん、Hさんが相続人になりますが、孫の相続分は、本位相続説では、F:G:H=1:1:1の割合になるのに対し、代襲相続説ではH:(F+G)=1:1となります。
具体的には、本位相続説では、F、G、Hはそれぞれ1/3ずつ相続分を有するのに対し、代襲相続説ではHが2/4を相続し、FとGは1/4ずつ相続することになります。
養子縁組前に生まれた養子の子(連れ子)
日本の民法では養子縁組前に生まれた養子の子(連れ子)は直系卑属には含まれず、代襲相続人にはならないとされていますが、韓国民法では 養子縁組前に生まれた養子の子も直系卑属に含まれ、代襲相続人になると考えられています。
第1順位の相続人に関する韓国民法と日本民法との違い
①子が全員相続放棄をすれば孫が相続人となる。
②養子縁組前に生まれた養子の子も直系卑属に含まれる。
韓国民法における第2順位 直系尊属
第2順位の相続人については韓国民法と日本民法とでは相違がありません。
日本民法と同様、韓国籍の被相続人に子どもなどの直系卑属がいない場合には、父母や祖父母などの直系尊属が第2順位の相続人になります。
なお、父母と祖父母が健在の場合は、親等の近い父母が相続人となり、祖父母は相続人とはならないのも、日本民法と同じです。
韓国民法による配偶者の相続順位と相続分
韓国民法では、配偶者は、第1順位の子や孫などの直系卑属、第2順位の父母や祖父母などの直系尊属と同順位で相続人となり、これらの相続人がいないときは、単独で相続人となります。つまり、被相続人の兄弟姉妹は、被相続人に配偶者がいる限り相続人とはならないのです。
相続分については、直系卑属または直系尊属と共同で相続するときは、5割加算となります。
例えば、相続人に配偶者と子ども二人がいた場合は、「配偶者:子1:子2=1.5:1:1」の割合で相続財産を取得することになります。
相続人 | 相続分 | |
---|---|---|
子ども等の直系卑属がいる場合 | 直系卑属と配偶者 | 直系卑属:配偶者=1:1.5 |
直系卑属はいないが直系尊属がいる場合 | 直系尊属と配偶者 | 直系尊属:配偶者=1:1.5 |
直系卑属も直系尊属もいない場合 | 配偶者が単独相続 | すべて |
配偶者が代襲相続人となる場合の相続分
日本の民法とは異なり韓国民法では配偶者が代襲相続人になれます。
では、その場合の配偶者の相続分はどうなるのでしょうか。
Aさんが亡くなり、配偶者のBさん、子どものCさん、そして代襲相続人としてDさんの配偶者Eさん、孫Gさんが相続人となる場合、相続分は下記の通りになります。
B:C:(E+G)=1.5:1:1となり、EさんとGさんの割合は1.5:1となります。
したがって「B:C:E:G=15:10:6:4」(分数表現だと、Bが15/35、Cが10/35、Eが6/35、Dが4/35)になります。
配偶者の相続順位と相続分に関する韓国民法と日本の民法との違い
①韓国民法では、被相続人に直系卑属(子・孫など)や直系尊属(父母・祖父母など)がいないときは、配偶者が単独で相続人になるが、日本民法では兄弟姉妹と一緒に相続人となる。
②日本民法では配偶者の相続分は1/2とされているが、韓国民法では直系卑属・直系尊属の5割増しとなるので、日本民法よりも配偶者の相続分が少ない。
【第1順位と配偶者の相続分】
【第2順位と配偶者の相続分】
③子が既に亡くなっている場合は、子の配偶者も代襲相続人となるが、日本民法では子の配偶者は代襲相続人とはならない。
韓国民法における第3順位 兄弟姉妹
日本民法と同様、韓国民法でも兄弟姉妹が第3順位の相続人になりますが、被相続人の配偶者がいる限り、兄弟姉妹は相続人にはならないのが韓国民法ならではの決まりです。つまり、被相続人に配偶者がなく、第1順位の子・孫などの直系卑属や、第2順位の父母・祖父母などの直系尊属もいない場合に初めて、兄弟姉妹が相続人になるのです。
また、日本民法との大きな違いは、兄弟姉妹にも再代襲が認められていることです。
代襲相続とは、本来相続人となる子・兄弟姉妹が、被相続人よりも先に死亡していた場合等に、その人の子(被相続人から見て孫や甥姪)が代わって相続人になることをいいます。
その人の子もすでに死亡しているときは、その子の子(被相続人から見てひ孫)が代わりに相続人になります。これを再代襲といいます。
日本民法では、再代襲は子が相続人になる場合にしか認められておらず、兄弟姉妹が相続人になる場合には、再代襲は認められていませんが、韓国民法では兄弟姉妹が相続人になる場合でも再代襲が認められています。これは日本の民法では、「兄弟姉妹が相続開始前に死亡等した場合には、その者の「子」がこれを代襲して相続人となる」と規定されているのに対し、韓国の民法では「子」ではなく、「直系卑属」と規定されているからです。
第1001条 前条第1項第1号と第3号の規定によって、相続人となるべき直系卑属または兄弟姉妹が、相続開始前に死亡し、または欠格者となった場合に、その直系卑属があるときは、その直系卑属が死亡または欠格者となった者の順位に代わり、相続人となる(代襲相続)
兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、兄弟姉妹に配偶者や直系卑属がいれば、その者が代襲して相続人となります。
なお、日本の民法では兄弟姉妹の代襲は兄弟姉妹の子(甥姪)までとされ再代襲は認められていませんが、韓国民法では兄弟姉妹であっても再代襲が認められ、甥姪の子も代襲相続人となることができます。
さらに、日本の民法では、父母の一方のみを同じくする異父・異母兄弟の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟の2分の1と規定されていますが、韓国民法では異父・異母兄弟であっても、相続分は変わらないとされています。
兄弟姉妹の相続における韓国民法と日本の民法との違い
①被相続人に配偶者がいれば、兄弟姉妹は相続人にはならない。
②兄弟姉妹であっても再代襲が認められている。
③異父・異母兄弟姉妹であっても相続分は変わらない。
韓国民法における第4順位 4親等以内の傍系血族
日本の民法との大きな違いは、叔父や叔母、いとこなど4親等以内の傍系血族が相続人になることがある点です。
被相続人に配偶者がなく、子・孫などの直系卑属や父母・祖父母などの直系尊属や兄弟姉妹がいない場合は、叔父叔母、いとこ、大叔父大叔母といった4親等以内の傍系血族が相続人になります。
なお、4親等以内の傍系血族が複数いるときは、親等の近い者が先順位となります。
例えば、甥姪と叔父叔母、いとことでは、甥姪と叔父叔母が3親等、いとこは4親等になりますので、甥姪、叔父叔母がいれば、いとこは相続人にはなりません。このとき、甥姪と叔父叔母が共同で相続人となります。
日本の民法との違い
①叔父叔母、いとこなどが相続人となることがある。
代襲相続
代襲相続とは、本来の相続人が相続開始時に既に亡くなっていたり、あるいは相続欠格や廃除により相続権を喪失している場合に、相続人に代わって、その子や孫などが相続人となることです。韓国民法にも代襲相続の制度はありますが、廃除の制度は存在しないため、代襲相続が発生するのは①相続開始前に死亡している場合と、②相続欠格者となった場合の2つに限定されます。
それ以外にも、①配偶者が代襲相続人になること、②兄弟姉妹についても再代襲が認められることなどが日本の民法との違いになります。
韓国民法1004条に規定されている相続欠格事由
①故意に直系尊属、被相続人、その配偶者又は相続の先順位若しくは同順位にある者を殺害又は殺害しようとした者
②故意に直系尊属、被相続人とその配偶者を傷害し死亡するに至らせた者
③詐欺又は強迫によって被相続人の相続に関する遺言し又は遺言の撤回することを妨げた者
④詐欺又は強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせた者
⑤被相続人の相続に関する遺言書を偽造・変造・破棄又は隠匿した者
韓国相続における必要書類
不動産の名義変更(相続放棄)や預貯金等の解約手続きなどでは、亡くなられた方の相続人が誰であるかを明確にするため、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍が必要とされます。
韓国籍の場合は、韓国の除籍謄本と、家族関係登録簿(基本事項証明書と家族関係証明書、婚姻関係証明書)と、その翻訳文がこれにあたります。また、死亡まで日本に居住していたことを証明するため住民票の除票が必要となります。
相続人については、韓国籍の相続人については基本証明書と家族関係証明書とそれらの翻訳文、帰化されている相続人は、帰化(国籍喪失)の記載のある韓国の戸籍(除籍謄本もしくは基本事項証明書)と帰化の記載のある日本の戸籍と現在の戸籍が必要となります。
相続人全員の話し合いで「誰が何を相続するか」を決めたときは、話し合いの内容を記載した遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要となります。
韓国相続Q&A
Q 韓国での本籍地がわかりません。
A 外国人登録原票に記載されている「国籍の属する国における住所又は居所」が、韓国での本籍地にあたりますので、韓国での本籍地が分からない場合は、被相続人の外国人登録原票を取り寄せて、確認する必要があります。ただし「面(日本の村に相当する)」までしか記載されていない場合は、韓国領事館で戸籍の発給を受けることができませんので、被相続人の父親などの外国人登録原票などを取得するなどの方法を考えることになります。
Q 韓国の戸籍に被相続人の死亡の記載がありません。
A 不動産の登記(相続登記)の手続きでは、韓国の戸籍に死亡の記載がなくても、死亡を証明する公的な書類を提出できれば、法務局によっては登記の申請を受け付けてもらえることがあります。ただし、死亡の記載のある住民票の除票や外国人登録原票では、戸籍に代わる公的な書類とまでは評価されませんので、死亡届など他の書類を取得する必要があります。これに対し、相続放棄の手続きでは、死亡届まで取得する必要はなく、住民票の除票だけでも申述を受理してもらうことができます。
なお、預金解約などの銀行の手続きでは、戸籍に死亡の記載がないと、手続きを進めてくれない金融機関もあるため、この場合は、韓国領事館に死亡申告をすることになります。
死亡申告ですが、大阪の領事館では、申告から10日程度で家族関係登録簿に死亡の記載が反映されます。死亡申告に必要な書類は領事館ごとに異なりますが、①被相続人の死亡届(届書記載事項証明書もしくは受理証明書)と翻訳文、②申告人の顔写真付きの身分証、③死後3か月が経過しているときは、被相続人の住民票の除票と翻訳文などが必要となります。
Q 相続人が韓国の戸籍に載っていません。
A 韓国に出生申告や婚姻していないと、韓国の戸籍には被相続人の子や配偶者として登録されません。韓国に出生申告や婚姻申告を行って戸籍を整理するのが望ましいですが、手続きに必要な種類が集められなかったり、被相続人が死亡していることから戸籍整理自体が困難であったりすることもあり、当事務所では、相続登記や相続放棄の手続きでは、被相続人との相続関係を証明できる書類を集めらえる限り取得し、なおかつ上申書(他に相続人がいないことの証明書)を添えて、登記申請や相続放棄の申述を行うようにしています。
Q 被相続人が生前、帰化している場合の相続手続きはどうなりますか?
A 日本民法を適用して相続手続きを進めることになりますが、被相続人の出生から帰化(国籍喪失)までの韓国の戸籍とその翻訳文は必要となります。
Q 期限のある相続手続きはありますか?
A 韓国民法では、「相続開始のあったことを知った日から3ヵ月以内」に相続放棄や限定承認をしないといけないと規定しています。「相続開始のあったことを知った日」とは「相続開始の原因となる事実の発生を知ることによって事故が相続人になったことを知った日」と考えられ、子の場合は、被相続人の死亡の事実を知った日が起算点になります。のように日本日本のように3ケ月経過後の相続放棄は認めていませんので、債務超過などの理由で相続を放棄する(相続放棄)、あるいは相続したプラスの範囲内でマイナス財産(借金や保証債務)を限定的に相続する(限定承認)場合には、相続開始を知った日から3ケ月以内に家庭裁判所で手続きをとる必要があります。なお、3ケ月経過後に債務超過であることを初めて知った場合には日本のように相続放棄の手続きをとることはできませんが、限定承認(特別限定承認)をすることはできますので、債務超過であることを知った日から3ケ月以内に手続きをすることになります。
はる司法書士事務所ではこれまで韓国籍の方の相続手続きを多数受任し、韓国に戸籍がない、相続人に行方不明者がいるなど様々なケースに対応していますので、お気軽にご相談ください。