韓国籍の方の相続登記 |大阪 はる司法書士事務所

更新日: 2022年10月17日

亡くなられた方が韓国籍の場合であっても、相続手続きの流れ自体は日本国籍の方と大きく異なることはなく、①遺言書の有無の確認、②相続人の確定、③相続財産の調査、④遺産分割協議、⑤相続登記の申請という流れに従って手続きを進めていくことになります。

相続登記が義務化されます

亡くなられた方が韓国籍であっても、日本の不動産については、日本の不動産登記法の規定に従って登記手続きを行うことになります。
従来は、相続登記に期限はなく、相続登記をするかどうかは相続人の任意に任されていましたが、不動産登記法が改正され、2024年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。
相続登記の義務化に伴い、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければ、10万円以下の過料の対象となるため、早めの手続きをお勧めしています。

相続登記の義務化の詳細

遺言書の有無の確認

遺言書があり、かつ「相続に関しては日本法を指定する」旨の記載があれば、日本民法を適用して手続きを進め、なければ韓国民法を適用して手続きを進めることになります。
遺言書が残されている場合、公正証書で作成された遺言以外は、家庭裁判所の検認が必要となります。検認については遺言者の最後の住所地、遺言書の所在地、遺産の所在地のいずれかが日本dであれば日本の家庭裁判所で行うことができます。

検認手続きに必要となる書類

必要書類 ①遺言書検印申立書
②申立人の戸籍謄本(韓国国籍の場合は基本証明書と家族関係証明書)
③申立人の住民票
④遺言者の除籍謄本(出生から2007年12月31日まで)
⑤遺言者の基本証明書と家族関係証明書(2008年1月1日以降)
⑥遺言者の住民票除票
⑦遺言者との関係がわかる相続人の戸籍謄本(韓国国籍の場合は家族関係証明書など)
⑧相続人の住民票
⑨収入印紙800円分
⑩連絡用の郵便切手

遺言書検認の手続きについてはこちら

相続人の確定

韓国民法では子や孫などの直系卑属が第1順位、父母や祖父母などの直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位、四親等以内の傍系血族が第四順位の相続人となります。配偶者は常に相続人となり、直系卑属と直系尊属がいない場合は、単独で相続人となります。

日本民法とは異なり、被相続人に配偶者がいれば兄弟姉妹は相続人となることはなく、また叔父叔母やいとこなど四親等以内の傍系血族が相続人となる場合がありますので注意が必要です。
さらに、韓国民法では代襲相続人に配偶者が含まれますので、慎重に相続人を確定する必要があります。

韓国民法における相続人の範囲と相続順位についてはこちら

なお、子が未成年で、法定代理人の親も一緒に相続人となる場合は、子と親の利益が相反しますので、法定相続分とは異なる遺産分割を行う場合は特別代理人の選任が必要となります。

特別代理人選任の申立

親権者である父又は母が,その子との間でお互いに利益が相反する行為(「利益相反行為」)をするには,子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。相続においては、被相続人の配偶者と子は共に利害が対立する関係にあるため、子のために特別代理人の選任が必要となります。

申立先 未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
申立権者 親権者・利害関係人
必要書類 ①特別代理人選任申立書
②申立人(親権者)と子の戸籍謄本(韓国国籍の場合は基本証明書と家族関係証明書)
③特別代理人候補者の住民票
④遺産分割協議書の案
申立てに必要な費用 ①収入印紙800円分
②切手 716円(82円×8,10円×6)

相続人の調査方法

被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得して調査することになります。
被相続人の方が韓国国籍の場合、出生から2007年12月31日までの韓国除籍謄本、および基本証明書と家族関係証明書を取り寄せる必要があります。
ただし、韓国戸籍の申請に際しては、被相続人の本籍地の記載が必要となります。
本籍地がわからない場合は、先に閉鎖外国人登録原票を取り寄せて、被相続人の本籍地を調べる必要があります。

なお、被相続人の韓国戸籍を請求できるのは、配偶者と直系血族に限られ、兄弟姉妹からの請求では取得できないので注意が必要です。

遺産分割

遺言書がなく、法定相続分とは異なる配分で遺産を承継する場合は、相続人全員による遺産分割協議をする必要があります。
遺産の分割に際しては、日本民法同様、韓国の民法でも特別受益や寄与分を認める制度がありますので、それらを考慮して具体的な相続分を決定することになります。

特別受益

生前に被相続人から贈与を受けた相続人がいる場合は、その贈与を相続分の前渡しと考え、相続財産に加えた上で、法定相続分に応じて相続人に分配するのが特別受益の制度です。
特別受益を受けている方(特別受益者)の具体的な相続分は下記の数式によって算出されます。

(相続財産+生前贈与の価額)×法定相続分-生前贈与

法定相続分

相続人 相続分
直系卑属+配偶者 1:1.5
直系尊属+配偶者 1:1.5
配偶者 すべて
兄弟姉妹 頭数で均等に分ける
四親等以内の傍系血族 頭数で均等に分ける

具体例
相続財産の総額が5000万円、相続人が配偶者Aさん、子どもBさん、Cさんで、Bさんが結婚資金1000万円、Cさんが教育資金1000万円を生前贈与されていた場合の具体的な相続分は下記の通りになります。
Aさんの相続分:(5000万円+1000万円+1000万円)×3/7=3000万円
Bさんの相続分:(5000万円+1000万円+1000万円)×2/7-1000万円=1000万円 Bさんの相続分:(5000万円+1000万円+1000万円)×2/7-1000万円=1000万円

特別受益となる贈与
日本民法同様、婚姻のため贈与(持参金や新居の購入資金など)や 生計の資本のための贈与(住宅の購入資金や家の新築ための土地の贈与など)、特別な教育費用などは特別受益に該当するとされています。
また、生命保険金や死亡退職金についても、特別受益に含むとするのが多数説です(日本の場合は、原則特別受益には含まれません)。

寄与分

日本民法で寄与分が認められるケースでは韓国民法でも寄与分が認められるといえます。
それに加え、韓国民法では「相当な期間、被相続人と同居し、生活水準を維持する扶養をした場合にも、寄与分が認められます。
つまり、韓国民法では、相当な期間、同居・看病で被相続人を扶養した場合、被相続人の財産の維持・増加に特別な寄与をした場合に寄与分が認められることになります。
ただし、配偶者が同居・看病した場合は除外されますので注意してください。

寄与者の具体的相続分の算出方法は下記の通りになります。

(相続財産-相続人の協議等で決まった寄与分)×法定相続分

遺産分割協議書の作成

遺産分割がまとまれば、その内容を記載した遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は相続登記や預金の解約などに必要となるため必ず作成するようにしましょう。

作成した遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印し、印鑑証明書を添付します。

実印の登録をされていない方は、住所地のある市区町村役場に申請すれば、印鑑登録され、印鑑証明書を交付してもらえます。

相続登記に必要な種類

①被相続人の除籍謄本(出生から2007年12月31日まで)
②被相続人の基本証明書と家族関係証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子入養関係証明書(2008年1月1日以降)
③被相続人の住民票(平成24年7月9日以前に亡くなられている場合は、閉鎖外国人登録原票などが必要となります)
④相続人が韓国国籍の場合は、基本証明書と家族関係証明書
相続人のなかで死亡されている方がいる場合で、韓国に死亡届を出していない場合は、韓国の戸籍には死亡の事実は記載されません。
この場合は、死亡されている相続人の方の閉鎖外国人登録原票が必要となります。
⑤相続人が日本国籍の場合は、現在の戸籍謄本
⑥不動産を取得される相続人の住民票
⑦韓国語で書かれた書類については翻訳文が必要。
⑧遺産分割協議書
⑨相続人全員の印鑑証明書
⑩固定資産評価証明

韓国の戸籍について

韓国では、戸籍制度が廃止され、それに代わり家族関係登録制度が創設されました。
従来の戸籍制度の下では、日本の戸籍と同様、父母・子の身分関係は戸主を中心に一つの戸籍にまとめられていましたが、2005年3月に韓国民法改正により戸主制が廃止され、それに伴い戸籍制度も廃止されました。
2008年1月1日からスタートした家族関係登録制度では、父・母・子の各人に一つずつ家族関係登録簿が作成されています。
そしてこの家族関係登録簿は目的別に①家族関係証明書、②基本証明書、③婚姻関係証明書、④養子縁組関係証明書(入養関係証明書)、⑤特別養子関係証明書(親養子入養関係証明書)という5種類の証明書が発行されます。
 なお従来の戸籍は除籍処理され、その写しは除籍謄本として発行されます。
そのため2007年(平成19年)12月31日以前に亡くなられた、もしくは帰化された場合は、家族関係登録簿は作成されませんので、除籍謄本のみを取得することになります。

2007年12月31日以前の相続 2008年1月1日以降
除籍謄本(出生~死亡まで) ①除籍謄本、②家族関係証明書、③基本証明書、④婚姻関係証明書、⑤入養関係証明書、⑥親養子入養関係証明書

家族関係登録簿 : 目的ごとに5種類の証明書からなる

①家族関係証明書  本人の登録基準地、姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、
父母・養父母・配偶者・子の姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号が記載されている。
兄弟姉妹は記載されないため、兄弟姉妹関係を証明するには父母の家族関係証明書が必要。
本人・父母・子の姓名・性別・生年月日・本籍地などを記載
②基本証明書 人の登録基準地、姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、
出生・改名・親権・死亡・国籍喪失または取得といった身分事項が記載されている。
出生・改名・親権・死亡・国籍喪失または取得といった身分事項の記載
③婚姻関係証明書 本人の登録基準地、姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、
配偶者の姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、婚姻・離婚に関する事項が記載されている。
婚姻・離婚に関する事項の記載
④養子縁組関係証明書(入養関係証明書) 本人の登録基準地、姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、養父母の姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、養子縁組・離縁・養子縁組無効・取消に関する事項が記載されている。  養子縁組・離縁・養子縁組無効・取消に関する事項の記載
⑤特別養子関係証明書(親養子入養関係証明書) 本人の登録基準地、姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、
養父母・親養子(特別養子)・実親の姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、特別養子縁組・離縁・養子縁組無効・取消に関する事項が記載されている。
特別養子縁組・離縁・養子縁組無効・取消に関する事項の記載

家族関係登録簿を請求できる人

本人、配偶者、直系血族とその代理人
※兄弟姉妹は請求できませんので注意が必要です。

住民票

平成24年(2012年)7月9日に外国人登録制度が廃止され、新たな在留管理制度がスタート。これに伴い、外国人の方も、日本人と同様に住民票が作成されることになりました。
そのため平成24年7月9日以降の相続であれば亡くなった方の最後の住所地を証明する書面として住民票を提出することができます。

それ以前の相続については外国人登録原票などによって最後の住所地を証明する必要があります。

相続登記の費用

報酬(税込) 実費
相続登記
(戸籍収集・相続関係説明図作成含む)
6万円(申請1件)
※2件目以降は、不動産1件につき1万円を加算
戸籍(戸籍 450円 除籍・原戸籍 750円 戸籍の附票 300円)
韓国戸籍・家族関係証明書など(1通120円)
翻訳代として1万~2万円必要
登録免許税(固定資産評価額の0.4%)
抵当権抹消登記 1万円 登録免許税(不動産1個につき1000円)
遺産分割協議書作成 2万円