相続登記を放置することの8つのリスク

相続登記をせずに放置することのリスクとしては下記のものが挙げられます。

  1. 10万円以下の過料の対象となります。
  2. 権利関係が複雑になります。
  3. 登記の申請に必要な書類を収集できなくなります。
  4. 相続人の誰かが認知症などで判断能力が低下すると、成年後見人が選任されない限り、遺産分割協議を行えなくなります。
  5. 相続した不動産を売却することができません。
  6. 他の相続人が勝手に不動産を売却する危険性があります。
  7. 相続人の債権者によって、不動産を差し押さえられる可能性があります。
  8. 不測の事態が生じた場合、不動産賠償が受けられなくなります。


10万円以下の過料の対象となります。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、違反すると10万以下の過料の対象となります。

相続登記の義務化の詳細

相続登記をせずに放置すると、権利関係が複雑になります。

相続登記をせずに長期間放置しておくと、法定相続人の誰かが死亡して次の相続(数次相続といいます)が発生したりすることがあります。また、本来相続すべき人が既に亡くなっている場合は、代襲相続が起こり、その方の子や孫が相続人となることがあります。
数次相続や代襲相続が発生すると、相続人の数がネズミ算式に増殖し、相続人間で「現住所が把握できない」、「疎遠である」、「全く面識がない」といった事態も生じ得、いざ相続登記をしようにも、遺産分割協議にこぎつけることもままならない状態となります。
遺産分割協議が成立しないと、次のような不都合が生じます。

遺産分割協議が成立しないことのデメリット

①不動産の名義変更ができず、売却や担保権を設定することができない。
②預貯金の名義変更・解約ができず、現金化することができない。
③相続税の優遇措置(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の評価減など)が受けられず、納税額が高額になる。
④不動産を空家のまま放置すると、固定資産税が最大6倍にまで跳ね上がり、行政により強制撤去されると撤去費用として数百万円が請求される危険性もある。

登記の申請に必要な書類を収集できなくなります。

相続登記の申請に必要な戸籍や住民票には保存期間があるため、長期間、相続登記をせずに放置していると、保管期間が切れて、発行されない危険性があります。

戸籍・住民票の保存期間についてはこちら

相続人の誰かが認知症などで判断能力が低下すると遺産分割協議が困難となります。

相続人の誰かが認知症などで判断能力が低下すると、成年後見人が選任されない限り、遺産分割協議を行うことができなくなります。
後見人の選任には費用がかかり、一度後見人が就任すれば、遺産分割協議後も後見人が被後見人の財産を管理することになるので、後見人への報酬が必要となります。

相続した不動産を売却することができません。

相続した不動産を売却するには、所有権の名義人を被相続人から相続人の方へ変更する必要があります。被相続人の名義のままだと、売却することはできません。

他の相続人が勝手に不動産を売却する危険性があります。

相続登記が完了するまでの間は、相続された不動産は法的には相続人全員の共有状態となります。この状態では、相続人のうちの一人が勝手に不動産全体を売却することはできません。しかし、法律で定められた相続分(法定相続分と言います)に従って、相続登記をすることはできます。
この法定相続分による相続登記は、保存行為として各相続人が単独で申請することができるため、相続人のうちの誰かが法定相続分で勝手に登記をしてしまい、自分の持分だけを売却してしまう、という事態も起こり得ます。
仮に、相続人のうちの一人が単独で相続する旨の遺産分割協議が成立していたとしても、相続登記を完了していなければ、持分を譲り受けた第三者に対して、自らが所有者であることを主張できません。その結果、この不動産は第三者との共有不動産となり、売却するにも第三者の承諾が必要となってしまいます。

相続人の債権者に不動産が差押さえられる可能性があります。

相続人のなかに借金があり、その支払いを滞納している方がいる場合、その債権者が判決などに基づいて相続した不動産を差し押さえる危険性があります。この場合、債権者は、債務者である相続人の法定相続分について差し押さえることができるため、判決書の正本を基に単独で法定相続分による相続登記を申請した後、債務者の持分に差押えの登記をすることになります。
このような事態が生じないためにも、相続発生後、速やかに遺産分割協議を成立させ、相続登記をすることが必要となります。

不動産賠償が受けられなくなります。

不動産賠償とは、事故や契約違反、不法行為などにより不動産がこうむった損害を金銭などで補てんすることをいい、賠償を受けることができるのは、原則として不動産の登記名義人となります。そのため、亡くなられた方の名義のまま、相続による名義変更をしていない場合には、不動産賠償を受けることができなくなります。
近年でも、福島原発事故により、自宅に居住できなくなった方に対し、東京電力が行おうとした不動産賠償においても、相続登記をしていないことが大きな障壁となり賠償を受けられないといったケースも多く報告されています。