相続財産に関するQ&A
Q 死亡後に振り込まれた年金は相続財産になりますか?
A 年金は毎年2月4月6月8月10月12月の年6回偶数月の15日に、前2ヶ月分が支払われます。そのため、必ず未支給年金が発生することになります。
未支給年金は、被相続人と生計を同一としていた①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の順で請求することができ、支給を受けた遺族固有の財産として、相続の対象から除外されます。
年金を受給していた方が亡くなられた場合、死後10日ないしは14日以内に、年金の受給停止の手続きを行う必要がありますが、手続き期間内に、年金が振り込まれてしまうことがあります。
例えば、年金を受給していた方が6月10日に亡くなられた場合、直後に受給停止の手続きをとらなければ、6月15日には、4月分と5月分の年金が振り込まれます。
口座に振り込まれた年金も未支給年金に変わりはないことから、相続財産には含まれず、被相続人と生計を同一にしていた配偶者などが受け取ることができます。また、年金は日割り計算ではないことから、6月分の年金を別途受け取ることができますので、未支給年金の請求手続きを行うようにしましょう。
亡くなられた月 | 受け取れる未支給年金 | |
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偶数月 | 支給日前 | 3ヶ月分(前2ヶ月分と死亡月) |
支給日後 | 1ヶ月分(死亡月) | |
奇数月 | 2ヶ月分 |
Q 被相続人の名義で契約している賃貸マンションに引き続き住むことはできますか?
A 賃借権も相続財産に含まれることから、相続放棄をしない限り、引き続き賃貸マンションに住むことができます。
Q 公営住宅の場合はどうですか?
A 公営住宅は、住宅に困っている所得の少ない方を対象として安い賃料で住宅を提供することにより国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものです。
公営住宅の入居資格は条例で定められており、また公募を原則とすること等から、公営住宅を使用する権利は被相続人の一身専属権と考えられ、相続の対象とはなりません。ただし、都道府県などの事業主体が承諾し、かつ一定の要件をクリアすれば、引き続き居住することができます。
なお、一定の要件としては①被相続人との同居年数が1年以上で、②所定の収入を超えていないこと、③不正入居ではなく、④3ヶ月以上の家賃の滞納や、住宅や共同施設を故意に毀損などしていないことなどが挙げられています。
Q 半年前に亡くなった父は、知人が借りた1000万円の連帯保証人になっていたようで、金融機関から相続人である私の元に、250万円を支払うよう請求書が届きました。連帯保証人になっていたことは全く知らなかったのですが、お金を支払わなければなりませんか?相続人は私の他、母と兄がいます。
A 連帯保証人の地位は相続財産に含まれるため、相続人であるあなた、お母様、お兄様は連帯保証人の地位を相続により承継することになります。借金は、分割が可能な債務(可分債務)であることから、法定相続分に従い、お母様が1/2(500万円)、あなた、お兄様が各1/4(250万円)の割合で連帯保証債務を負うことになります。したがって、知人である主債務者が返済できない場合は、あなたには250万円を支払う義務があります。支払い義務を免れるためには、相続放棄をするしかありません。
しかし、相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きをとらなければならないため、今回のように死後半年が経過している場合には、相続放棄をすることはできないのが原則です。
ただし、3ヶ月経過後に、借金が発覚した場合にまで、相続放棄をすることができないとすれば、借金の存在を全く知らない相続人にとって酷な結果となることがあります。そこで、
被相続人の負債を知らなかったことに相当な理由がある場合には、借金の存在を認識した時または通常これを認識しうるべき時から起算して3ヶ月以内であれば、相続放棄が認められる場合があります。実務上も、3ヶ月経過後の相続放棄に関しては、相当な理由がないと明らかに判断できる場合以外は受理するのが一般的となっています。今回のケースでも、相続放棄が認められる可能性があることから、早急に専門家に相談するようにしてください。
Q 母と同居していた長女が、生前に母の預金から勝手に1000万円を引き出していたことがわかりました。この1000万円はどう扱ったらいいですか?
A まず1000万円の使途を明確にする必要があります。被相続人であるお母様の生活費として使っていたのであれば、問題はありません。お母様に無断で長女が使ってしまったのであれば、生前お母様は長女に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権あるいは不当利得に基づく返還請求権を行使したと考えられます。これらの請求権は相続の開始により、各相続人が法定相続分に従い取得することができます。相続人全員が同意すれば、これらの請求権を遺産分割の対象に含めることができます。ただし、長女が支払いに応じない場合は、民事訴訟を提起する必要があります。
なお、損害賠償請求権か不当利得返還請求権かの一番の違いは消滅時効の期間にあります。損害賠償請求権は使い込みがあったときから三年で、不当利得返還請求権は使い込みから10年で時効にかかります。そのため不当利得返還請求により訴訟を提起するのが一般的です。
Q 相続人がいない場合、相続財産はどうなりますか?
A 相続人となる親族がいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合には、相続人がいないということになります。この場合、内縁関係の配偶者など被相続人と生計を同じくしていた方や、被相続人の療養看護に努めた方、その他被相続人と特別の縁故があった方(特別縁故者)がいれば、その方に相続財産が与えられる場合があり、それでも処分されなかった相続財産は国庫に帰属します。