【韓国籍の方の相続登記の解決事例】相続人に韓国の戸籍がなかったケース

相談内容

他の司法書士事務所に相続登記を依頼していたが、書類の不備などで相続登記の申請が取下げられたことから、当事務所に改めて相続登記を依頼したいと相談に来られました。


問題点

亡くなられた方(被相続人)は、20年以上前に離別した母親Aさんで、韓国籍の方です。
Aさんは最初の夫Bさん(韓国籍)と婚姻し、ご依頼者であるCさん、Dさんのお二人のお子さんをもうけた後、離婚。Cさん、Dさんは父であるBさんが親権者となって父方の祖父母に育てられました。その後、Aさんは日本籍のEさんと再婚されましたが、Eさんは既に他界されています。

問題は、被相続人であるAさんは、韓国側にBさんとの婚姻および離婚の申告をしておらず、また子であるCさん、Dさんの出生の申告をしていなかったことから、Aさんの韓国戸籍(除籍、家族関係登録簿)には、Bさん、Cさん、Dさんが記載されていないこと、前夫のBさんについては、韓国側にBさんの出生の申告がされていなかったことから、韓国に戸籍が存在しないこと、お子さんであるCさん、Dさんについても、韓国側に出生の申告がなされていないことから、韓国に戸籍がありませんでしたが、Cさんについては、帰化の際に、家族関係登録の創設許可申請をされていたので、家族関係登録簿は存在しますが、被相続人Aさんの戸籍との関係性は切断されているため、親子関係の証明としては希薄であること、Dさんについては、創設許可申請はされていないので、家族関係登録簿はもとより韓国に戸籍が存在しないことなど、韓国の戸籍だけでは、被相続人Aさんの相続人がCさん、Dさんであることを証明することは不可能です。

相続登記では、被相続人の出生から死亡まで連続する戸籍の提出が必要となりますが、これは、出生から死亡までの戸籍を辿ることで、婚姻や離婚、養子縁組など身分事項の変動や、子の情報などを漏れなく把握し、相続人が誰であるのかを戸籍でもって特定する必要があるからです。
今回のケースでは、婚姻、離婚申告、及びこの出生申告がされていないことから、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めても、相続人を確定することができないため、戸籍の不備を補完する必要があります。

ところで、前任の司法書士による相続登記の申請の取り下げ理由ですが、提出された書類に不備が多いとのことでした。
提出された書類を見せてもらったところ、被相続人Aさんについては外国人登録原票と、家族関係登録簿のうち基本証明書と家族関係証明書しか提出されていませんでした。
家族関係登録制度は、戸籍に代わる制度として2008年1月1日スタートしたものなので、相続登記の書類としては、家族関係登録簿に加えて、出生から2008年1月1日以前の除籍謄本を添付する必要があるわけです。提出されたAさんの外国人登録原票には、夫として再婚したEさんの氏名、生年月日、国籍が記載されていましたが、Eさんに関する戸籍は提出されていませんでした。
前夫Bさんとの婚姻届、離婚届の写しと、Dさんの出生届の写し、Cさんの帰化後の日本の戸籍は提出されていましたが、他に相続人がいないことの証明書(上申書)は提出されておらず、相続人の方の書類にも不備があったことも、取下げの原因となっていたようです。

今回のケースのように、被相続人の戸籍からは相続人が誰であるかをまったく特定できない場合、戸籍自体を整理する必要がありますが、以前、依頼者が法務局に相談したときには、集められるだけの書類を集めてもらって、それで相続人が特定できるようなら戸籍整理までは特に要求しないといった趣旨のことを言われたこと、仮に戸籍整理をするにしても前夫Bさんの協力が得られにくいことなどの事情があったことなどから、戸籍整理をせずに、相続登記の手続きを進めることにしました。

不足書類の収集

被相続人の除籍謄本・家族関係登録簿(基本証明書・家族関係証明書・婚姻関係証明書・養子縁組関係証明書)については、お子さんの委任状があれば取得できますが、Aさんの場合、Aさんの戸籍には子Cさん、Dさんは記載されてなく、CさんはAさんとは別に家族関係登録簿を創設していることから、Cさんからの委任状では、Aさんの戸籍を取得することはできません。

Cさんが以前行った家族関係登録簿の創設許可とは、父母に家族関係登録簿がないために出生申告ができない人が、裁判所(法院)の許可を得て、家族関係登録簿を作ることができる制度です。Cさんの場合、母であるAさんとは疎遠であったことから、父Bさんの外国人登録原票に記載された本国の居所を登録基準地として、家族関係登録簿が創設されているため、Cさんの家族関係証明書の母欄にAさんの姓名、生年月日が記載されていても、家族関係登録簿が新たに創設されていることから、母欄に記載されたAさんは、被相続人Aさんとは別の人物とみなされてしまうため、いくら姓名、生年月日が一致していても、Cさんと被相続人Aさんの親子関係は証明できず、Cさんの委任状では、被相続人Aさんの戸籍を取得することができません。

一方、Dさんにしても被相続人Aさんの戸籍には記載されていませんので、Dさんの委任状だけでは請求できないため、Aさんが死亡していること、CさんはAさんのお子さんであること、Aさんの相続手続きにAさんの戸籍が必要であることを証明する書面をつけて、どうにか被相続人Aさんの戸籍を取得することができました。 その他、再婚した夫の戸籍(婚姻の記載、死亡の記載のあるもの)、Cさんの外国人登録原票やDさんの帰化の記載のある家族関係登録簿など、取得できる書類は全て集めた上で、他に相続人がいないことの上申書を添付して相続登記の申請をしたところ、書類の不備を指摘されることなく、無事、相続登記は完了しました。

はる司法書士事務所は韓国籍の方の相続手続きに力を入れています。

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