死後離婚ってなに?

嫁姑に代表される結婚によってできた配偶者の両親や兄弟との関係を姻族関係といいます。
姻族関係は、生前に離婚をすれば、自動的に消滅しますが、配偶者が亡くなった場合、姻族関係を終了させるには役所に「姻族関係終了届」を提出する必要があります。
死別により既に婚姻関係は解消されているため、この姻族関係終了届には、法的な意味での「離婚」としての効力はありませんが、生前離婚と同様、姻族関係を終了させる手段となることから、近年では広く「死後離婚」として周知され、2015年度の届け出数は2783件と、ここ10年で1.5倍に増加しています。
こじれた嫁姑関係や、義理の両親の介護問題、お墓の管理への不安などがその背景にあるといわれています。

姻族関係終了届の手続き

姻族関係終了届は、最寄りの市区町村役場で入手でき、印鑑と運転免許証などの本人を確認できる書類、および配偶者の死亡の事実が記載された除籍謄本を添えて、届出人の本籍地又は住所地のある市区町村役場に提出します。配偶者の死亡届が受理された後であれば,いつでも提出することができ、配偶者側の親族の同意は不要とされています。提出された時点で姻族関係は終了し、戸籍に姻族関係終了の届け日が記載され、受理証明書が発行されます。

提出先届出人の本籍地又は住所地のある市区町村役場
提出できる人遺された配偶者のみ
※親族側からは提出できず、提出に際しては、親族の同意は不要
必要書類印鑑(シャチハタ以外)
本人確認書類(運転免許証、住基カードなど)
配偶者の死亡の事実が記載された除籍謄本(本籍地の役場に提出する場合は不要)

姻族関係終了届の効果

姻族関係が終了しても、遺族年金の受給資格には影響がなく、提出後も引き続き年金を受け取ることができます。
また、亡くなった配偶者の遺産も相続できるので、姻族関係終了届を提出することで経済的な不利益を受ける心配はありません。
さらに、姻族関係が終了すれば、義理の親族を扶養する義務もなくなります。
ただし、子どもがいる場合、その子と配偶者の親族とは血族関係にあるため、この関係性は解消されません。そのため、義理の両親(子から見れば祖父母)に相続が発生した場合は、子が代襲相続人として義理の両親の遺産を承継することになります。義理の両親が多額の負債を抱えていた場合は、相続放棄の手続きをとらない限り、子には義理の両親の借金を返済する義務が生じることになります。また、義理の両親(祖父母)と子(孫)は2親等の直系血族であることから、当然に扶養義務が発生します。

扶養義務

生活のために経済的な援助を必要としている人を扶養する義務を負うのは、原則として直系血族および兄弟姉妹です。
しかし、特別の事情があるときは、3親等内の親族が扶養義務を負うこともあります。
義理の両親は、3親等内の親族に当たることから、義理の両親に直系血族(子や孫)や兄弟姉妹がいないなど特別な事情があるときは、家庭裁判所から義理の両親の扶養を命じられる場合もあります。
また、同居の親族は互いに助け合う義務があるので、義理の両親と同居している場合は、義理の両親に対して互助義務を負うことになります。
配偶者の死後、姻族関係終了届を提出すれば、義理の両親との姻族関係は解消することになりますので、互助義務や扶養義務を負うことはありません。 今後、少子高齢化が進めば、義理の両親の扶養・互助義務を負う可能性が高まることから、姻族関係の終了を選択する割合が増えると予想されています。

旧姓に戻したいとき

姻族関係が終了しても戸籍はそのままの状態となるので、旧姓に戻したい場合は、別途「復氏届」を提出する必要があります。 復氏届を提出すれば、亡くなった配偶者の戸籍から抜け、結婚前の戸籍に戻るか、本人を筆頭者とする新しい戸籍を作成することになります。
ただし、配偶者との間に子どもがいる場合は、子どもの姓や戸籍はそのままとなります。つまり、復氏届の提出によって、親と子が別々の戸籍、氏を名乗ることになります。
子も本人の戸籍に入れたい場合は、まず、家庭裁判所に「子の氏の変更申立書」を提出して許可をもらう必要があります。その後で、「入籍届」(子供の氏を父の氏から母の氏に変更する場合等の届出)を提出すれば、子を本人の戸籍に移すことができます。なお、子の氏を変更しても、子と配偶者の親族との関係は解消しません。