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数次相続の解決事例

相続登記がないために空き家となった実家を放棄できない

相談内容

借地上に建てられた実家でひとり暮らしをしていたお母様が亡くなり、相続人であるお子様から建物を収去する費用がないので相続放棄をしたいとのご相談を受けました。

問題

建物の登記簿を確認したところ、登記の名義人は十数年前に亡くなられたお父様のままになっていたため、お母様の持分1/2については相続放棄をすることはできても、残り1/2については相続放棄をすることができません。


相続関係
数次相続

・相続人であるお子様3名は独立し持家があります。
・実家の売却を検討し、実際に不動産業者に売却を依頼しましたが、築年数が古く、不便な場所にあることから買い手を見つけるのは難しいといわれています。
・実家が空き家となるため、地主に借地を返還したいが、建物を取り壊す費用がありません。

ご提案

お母さまの相続を放棄しても、それ以前に発生していたお父様の相続については放棄できないことから、建物を収去する場合、収去費用の1/2を負担する義務を負うことになります。
そのため、まずは地主さんに建物を無償で引き取ってもらえないかを交渉し、交渉がうまくいかなかった場合は、売却か、相続放棄(お母さまの相続について)か、費用負担の少ない方法を検討することにしました。

地主との交渉結果

地主さんに事情をお話ししたところ、抵当権などが設定されていなければ、建物を引き取ってもいいとのこと。ただ、建物には平成10年に設定された根抵当権設定仮登記と賃借権設定仮登記が設定されていたため、これらの登記を抹消することが建物引き取りの条件となりました。

根抵当権設定仮登記と賃借権設定仮登記

街金融業者の代表者を債権者、依頼者のお父様を債務者とする金銭消費貸借契約を担保するため根抵当権設定仮登記と、街金融業者の従業員を賃借人とする賃借権設定仮登記が連件で設定されていました。本件物件には、根抵当権設定仮登記以前に複数の(根)抵当権が設定されていたため、仮に競売にかけられても、街金融業者には配当を得る見込みがなかったことから、事実上の債権回収を図るため短期賃貸借を結んでいたと思われます。
通常、抵当権設定登記後に締結された賃借権は、抵当権者に対抗できないのが原則です。したがって、抵当権が実行されると、賃借人は競売により不動産を買い受けた買受人に対し、当該不動産を明け渡さなければなりません(建物賃貸借については、6ヵ月間の建物明渡猶予制度が置かれていますが、猶予期間経過後には必ず立ち退かなければなりません)。しかしこれでは、抵当権設定後の不動産の有効利用を事実上阻害してしまう恐れがあるとの配慮から、民法602条に定める期間(建物3年、土地5年)を超えない賃貸借に限って、例外的に抵当権に対抗できるとする短期賃貸借制度が設けられていました。しかし、賃貸借の実態がないにもかかわらず立退き料等を要求して抵当権の実行を妨害するという行為が頻発したため、平成16年4月1日に廃止されています。
本件不動産に賃貸借設定仮登記が設定された平成10年には、まだこの短期賃貸借制度が存在したため、街金融業者は、先順位の抵当権が実行された場合、抵当権者もしくは買受人から賃借権仮登記の抹消についての承諾料や、当該不動産の明渡しについて立退き料を請求するなどして事実上の債権回収を図るため、賃借設定仮登記を同時に設定していたと考えられます。
なお、街金融業者が設定した根抵当権は仮登記であるため、自らの権利を第3者に主張する「対抗力」はありませんが、仮登記によって登記順位を予約することができます。そのため後日、本登記(根抵当権設定登記)がなされたときは、仮登記設定時に遡って対抗力が生ずることになりますので、仮登記後に登記された抵当権などに優先することになります。ただ、本件の場合は、配当の見込みがないことから、本登記を設定するよりも、登録免許税がはるかに安くつく(本登記の場合は極度額の4/1000、仮登記の場合は不動産1個につき1000円)仮登記を設定して、賃借権設定仮登記を同時に設定することで、事実上の債権回収を図ったといえます。

根抵当権設定仮登記と賃借権設定仮登記の抹消

ご依頼者に確認したところ、お父様の死後、債権者である街金融業者から一度も支払の催促はなく、訴訟などが提起されたこともないことから、金銭債務自体が、5年の時効にかかっている可能性があります。金銭債務が時効により消滅すれば、付従性から根抵当権設定仮登記を抹消することができます。また、賃借権についても、賃借の実態はなく、契約に定められた存続期間である3年が経過しているため、存続期間の満了に基づき賃借権設定仮登記を抹消することができます。 ただし、仮登記といえども、登記の抹消には、債権者および賃借人の協力あるいは承諾が必要となります。そこで、登記簿上に記載されている住所宛に手紙を発送し、債権者および賃借人からの連絡を待つことにしました。
手紙発送から1週間程度で、債権者とは連絡がつき、登記の抹消に協力してもらえることになりましたが、賃借人に宛てた手紙は宛所不明で返送されてきました。債権者に確認したところ、10年以上前から行方が分からないとのこと。住民票を取り寄せようにも、賃借人の住民票(除票も含む)は大阪市の公募上、見当たらない旨の回答がなされたため、登記権利者となる相続人が単独で賃借権設定仮登記の抹消を申請できるよう、訴訟を提起することにしました。

遺産分割協議と相続登記

賃借権設定仮登記抹消登記手続請求訴訟を提起するには、相続人が当該不動産の所有者であることが前提要件となります。そのため、訴訟の提起に先立ち、登記名義人であるお父様から相続人の方へ所有権の名義を変更する必要があります。
数次相続の場合も、相続登記の申請は、第1次の相続による登記をし、次に第2次の相続による登記を順次行うのが原則です。本件の場合は、まずお父さまの死亡により、相続人であるお母さま、お子様3名のための相続登記をし、次いでお母さまの持分につき相続登記をする必要があります。ただし、第1および中間の相続が単独相続である場合は、登記名義人から最終の相続人名義へ直接相続登記を申請することが認められています。ここでいう単独相続には、遺産分割協議により相続人の一人が単独で不動産を取得した場合も含まれるため、お子様全員で話合った結果、本件不動産を次女が単独で取得する旨の遺産分割協議の成立に基づき、登記名義人であるお父様から次女に直接相続登記を申請することにしました。相続登記の申請と一緒に、根抵当権設定仮登記の抹消も申請しました。
なお、遺産分割協議において、お子様3名は、お父様の相続人であると同時にお母さまの相続人としても協議に参加する必要があります。

賃借権設定仮登記抹消登記手続請求訴訟

被告である賃借人の住所が不明であることから、訴状と一緒に、登記簿上の住所地の現況調査書を添付した公示送達の上申書も裁判所に提出しました。通常、裁判は被告に訴状や呼出状が送達されたときに開始されますが、被告の住所や居所が不明なために訴状などが送達できず、裁判が開始されないとすれば、裁判所の機能として不十分です。そこで、訴状が被告に送達されない場合の救済措置の一つとして「公示送達」という送達方法が認められています。公示送達とは、被告の住所や居所が不明な場合に、裁判所の掲示板に,一定期間訴状その他の送付物を掲示することで、期間経過後に送達の効力を生じさせる方法です。
公示送達の場合、被告は訴状が送達されていることも知らないことが明らかですから、被告が出廷しなくても欠席裁判として原告の言い分を認めることはできず、原告側で主張を立証する必要があります。ただし、被告側の反論は一切ないことから、原告側の主張立証は軽いものにとどまり、原告側の主張がスムーズに認められるのが実情です。本件でも被告の欠席により、原告側の主張が全面的に認められ、被告に賃借権仮登記抹消登記手続きを命ずる判決が下されました。この判決に基づき、次女が単独で賃借権設定仮登記の抹消登記を申請することができました。

地主への贈与

本件不動産に設定されていた根抵当権設定仮登記と賃借権設定仮登記が抹消できたので、地主と次女との間で本件不動産の贈与契約を締結し、次女から地主へ所有権移転登記を申請し、本件の業務は終了しました。


はる司法書士事務所は訴訟(訴額140万円以下)を得意とします。
当事務所の司法書士は、140万円以下の訴訟を得意とし、これまで所有権移転登記請求訴訟、建物明渡訴訟、未払残業代請求訴訟、貸金返還請求訴訟、不当利得返還請求訴訟等200件以上の訴訟経験があります。相続登記などの業務だけでなく、訴訟(訴額が140万円以下)が必要となる業務についても一括して代行させていただきますので、お気軽にご相談ください。


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