各種申立ての手続きの流れについて

相続人の状態によっては、遺産相続に際し、特別代理人や後見人などの選任を家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
ここでは各種申立ての手続きの流れについて説明します。

失踪宣告の申立

共同相続人の中に行方不明者がいる場合で,その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪),又は戦争,船舶の沈没,震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は,利害関係人(失踪者の配偶者・法定相続人など)は家庭裁判所に対し失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度で、普通失踪の場合は生死不明となった時点から7年間の期間満了を待って死亡したものとみなされます(危難失踪の場合は危難が去った時)。

申立先 不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所
申立権者 相続人・財産管理人・受遺者などの利害関係人
必要書類 ①家事審判申立書
②不在者の戸籍謄本・戸籍の附票
③失踪を証する資料(警察署長の発行する家出人届出受理証明書・返戻された不在者宛の郵便物等)
④申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本等
申立てに必要な費用 ①収入印紙800円分
②切手 4404円円(500円×2,310円×2,82円×30,52円×2,10円×20,2円×10)
③官報公告料4298円

手続の流れ

①失踪宣告の申立

不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所へ失踪宣告の申立てをします。

②家庭裁判所における審判・ 公示催告

不在者に生存の届け出をすべき旨、家庭裁判所による公告が行われます。
公告期間:3ヶ月以上(危難失踪の場合は1か月以上)

③失踪宣告

公告期間の満了を待って、家庭裁判所が失踪宣告を行います。

④失踪宣告後の戸籍の届出

失踪宣告の確定から10日以内に、申立人は不在者の本籍地または申立人の所在地の市区町村長へ戸籍の届出をしなければなりません。このとき、失踪宣告の審判書と確定証明書を添付します。

失踪宣告と遺産分割

失踪宣告の確定により、行方不明の相続人の方は、法律上死亡したものとみなされることになりますので、その後、その者を除いた相続人間で遺産分割協議を成立させることができます。 ただし、被相続人よりも前に、失踪者が死亡した者とみなされれば、その者に子などがいる場合には、その子が失踪者を代襲して相続人となりますので、この代襲相続人を加えて遺産分割協議を行う必要があります。なお、失踪宣告が確定するまで期間を要するため、早急に遺産分割協議を成立させる必要がある場合は、一旦不在者財産管理人を選任したうえで、失踪宣告の申立てをすることもあります。

不在者財産管理人選任の申立

生死不明期間が7年に満たない場合やどこかで生存しているとの噂がある場合などは、利害関係のある共同相続人が家庭裁判所に対し不在者の財産管理人の選任を申し立てることができます。
選任された不在者財産管理人は,不在者の財産を管理・保存するほか,家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で,不在者に代わって,遺産分割協議や不動産の売却等を行うことができます。

申立先 ①不在者の住所地・居所地,
②不在者の最後の住所地、
③上記の所在地が不明な場合は財産の所在地を管轄する家庭裁判所
申立権者 相続人などの利害関係人・検察官
必要書類 ①不在者の戸籍・戸籍の附票
②財産管理人候補者の住民票
③不在の事実を証する資料
④不在者の財産に関する資料
⑤申立人の利害関係を証する資料
申立てに必要な費用 ①収入印紙800円分
②切手 3150円(500円×2,82円×25,10円×10)

手続の流れ

①不在者の調査・不在者の財産の調査

戸籍などを取り寄せ、不在者の住所地における現地調査や手紙を送るなどして実際に行方不明かどうかを調査するとともに、不在者の財産及び遺産と相続分についても調査します。

②不在者財産管理人選任の申立

①不在者の住所地・居所地,②不在者の最後の住所地,上記の所在地が不明な場合は財産の所在地を管轄する家庭裁判所に対し、不在者財産管理人選任の申立てをします。

不在者財産管理人:不在者の財産を管理するほか、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得た上で、不在者に代わって、遺産分割協議を行ったり、不在者所有の不動産の売却等を行うことができます。
不在者財産管理人として選任されるために特に必要な資格はありませんが、大阪家庭裁判所の場合は、必ず弁護士が選任されることになります。

③不在者財産管理人選任の審判

裁判所の調査によっても不在者が発見されなければ財産管理人が選任されます。

④財産目録の提出

選任された財産管理人は不在者の財産を調査し、財産目録を作成して裁判所へ提出します。

⑤遺産分割協議書作成 ・不在者財産管理人の権限外行為の許可の申立

不在者財産管理人と他の相続人で遺産分割協議を行い、その協議案を添付して、案通りに遺産を分割することの許可を裁判所へ申立てる必要があります。裁判所の許可の審判が下りれば、協議書案通りに遺産分割協議書を作成し、全員で署名・捺印をすれば、遺産分割協議が成立します。

特別代理人選任の申立

親権者である父又は母が,その子との間でお互いに利益が相反する行為(「利益相反行為」)をするには,子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。相続においては、被相続人の配偶者と子は共に利害が対立する関係にあるため、子のために特別代理人の選任が必要となります。

申立先 未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
申立権者 親権者・利害関係人
必要書類 ①特別代理人選任申立書
②申立人(親権者)と子の戸籍謄本
③特別代理人候補者の住民票
④遺産分割協議書の案
申立てに必要な費用 ①収入印紙800円分
②切手 716円(82円×8,10円×6)

手続の流れ

①相続人の調査・相続財産の調査

相続人を調査し、法定相続人を確定した後、相続財産の調査を行います。

②特別代理人選任の申立

特別代理人の選任申立に際し、遺産分割協議書の案を提出する必要があります。
この協議書案は、未成年者にも法定相続分を確保した内容でなければなりませんが、事案によっては法定相続分よりも少ない、あるいは全く取り分のない遺産分割も認められる場合もあります。この場合には未成年者の相続分を減らす理由を遺産分割協議書案に盛り込むか、あるいはその旨の上申書を作成し、提出することになります。

【遺産分割協議書への記載例】
被相続人 ○○の死亡により開始した遺産相続において、相続人である妻 A、長男 Bの特別代理人は次のとおり、被相続人の遺産を分割することに合意した。 遺産分割の趣旨は、後記の預貯金をAに取得させることで、当該預貯金を適切に管理し、必要に応じて未成年の子Bの養育費や生活費にあてることにある。

③特別代理人選任の申立

未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、特別代理人選任の申立てを行います。

④特別代理人選任の審判

申立に不備がなければ、申立てから2週間程度で、申立人と特別代理人候補者宛てに家庭裁判所から照会書が届きます。 照会書には
・申立てを行ったいきさつ
・申立て内容を未成年者に説明したか
・申立てをすることを前もって特別代理人候補者に伝えたか
・未成年者と特別代理人候補者との関係(続柄)
・当該候補者が特別代理人として適任であることの理由
・当該候補者以外に特別代理人の適任者の有無
・遺産分割協議書案に記載されているもの以外に遺産があればその品目・数量・価格
・遺産分割協議書案で未成年者が取得するものがない理由などが記載されていますので、これらに回答していく必要があります。

照会書を返送後、家庭裁判所で審判が行われ、問題がなければ特別代理人が選任されます。

⑤遺産分割協議書作成

審判が下りれば、選任された特別代理人と他の相続人全員で遺産分割協議案通りに遺産分割協議書を作成し、全員で署名・捺印をすれば、遺産分割協議が成立します。

成年後見人選任の申立

相続人の中に、認知症や知的障がい、精神障がい等により、自分の行為や、その行為の結果がどのような意味を持つのか判断できない人がいる場合、家庭裁判所に後見開始の審判を申立てて、成年後見人を選任してもらう必要があります。

申立先 本人の住所地の家庭裁判所
住民票の住所と居所が異なる場合は、居所を管轄する家庭裁判所
申立権者 本人・配偶者・四親等内の親族等・市区町村長他
必要書類 ①申立書
②申立書付票、親族関係図、後見人等候補者身上書
【申立人に関するもの】
①戸籍謄本
【本人に関するもの】
①戸籍謄本
②戸籍の附票または本籍地の記載のある住民票
③後見登記されていないことの証明書
④診断書(医師に依頼して作成)
⑤本人の財産目録
⑥本人の収支予定表
⑦本人の健康状態がわかる資料
⑧本人の財産等に関する資料
【成年後見人等の候補者に関するもの】
①戸籍謄本
②戸籍の附票または本籍地の記載のある住民票
③身分証明書(成年被後見人等になっていないことの証明)
※裁判所によって異なる場合があります。
申立てに必要な費用 ①収入印紙800円分+2600円分(登記用)
②切手 3900円(1000円×1,100円×15, 82円×10,52円×5,20円×10,10円×10,2円×5,1円×10)

手続の流れ

①面談

本人の判断能力、日常生活、経済的状況等を把握し、もっとも適切な制度・方法を検討します。出張面談も行っています。お気軽にお問い合わせください。

②家庭裁判所への申立

法定後見制度を利用することが決まれば、後見人の候補者を決め、必要書類を準備して家庭裁判所へ申立てを行います。

③家庭裁判所における審判

調査・鑑定

  1. 家庭裁判所調査官が申立人・後見人候補者に事情を聞き、本人の意思を確認します。
  2. 家庭裁判所調査官が本人の親族へ書面によって申立てへの賛否を確認します。
  3. 必要に応じて判断能力の程度を判定するため精神鑑定を行います。

審理・審判
提出書類、調査結果、鑑定結果などを総合的に判断して本人にとって後見人等を必要と判断した場合、後見開始・保佐開始・補助開始のいずれかの審判を行います。審判がなされた場合、本人、申立人、成年後見人・保佐人・補助人(成年後見人等)のいずれかに審判書謄本が送付されます。

④後見人の登記

成年後見人等が、審判書謄本を受け取ってから2週間以内に異議の申立てがなければ、審判が確定し、その旨が登記されます。

⑤後見事務のスタート

登記後に送付される書類が届いてから1ケ月以内に財産目録と年間収支予定表を作り、家庭裁判所へ提出します。

相続財産管理人選任の申立

相続人が存在しない場合、亡くなった方の財産は「相続財産法人」という一つのまとまりになって、管理され清算されていくことになります。 そしてこの相続財産法人を管理して清算事務を行っていくのが、「相続財産管理人」です。相続財産管理人は、相続に利害関係を持っている人または検察官が家庭裁判所に申し立てて選んでもらう必要があります。

 

相続財産管理人の選任が必要となるケース

 

相続放棄後に、不動産の管理義務を免れたい場合や、内縁の配偶者などが財産分与を請求する場合には、相続財産管理人の選任申立てが必要となります。
また、相続債務の債権者が債権を回収する場合にも、相続財産管理人を選任する必要があります。

相続財産管理人選任が認められるための要件

  1. 相続が開始していること
  2. 相続人のあることが明らかでないこと
    法定相続人が存在しない場合だけでなく、法定相続人はいるが相続欠格や廃除により相続資格が剥奪されている場合、あるいは相続放棄によって初めから相続人ではなかったものとみなされる場合も含まれます。
  3. 必相続財産が存在すること
    相続財産に手続き費用をかけて処理するだけの価値があることが必要です。
申立先 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申立権者 利害関係人(債権者・受遺者・特別縁故者など)
必要書類 ①申立書
②被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
③被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
④被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑤被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑥被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑦代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
⑧被相続人の住民票除票又は戸籍附票
⑨財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
⑩利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)
⑪財産管理人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票など
申立てに必要な費用 ①収入印紙800円分
②切手 2230円(500円×2,310円×1,82円×10,10円×10)
③官報公告料3775円

手続の流れ

①相続財産管理人の選任申立

相続開始後、相続人のあることが明らかでない場合には、相続財産は法人と擬制され、検察官又は利害関係人の請求により家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。

②相続財産管理人の選任・相続人捜索のための官報公告

申立てを受けた裁判所は、選任要件を満たしていると判断すれば、相続財産管理人を選任し、その旨を公告します。この官報公告には、相続人捜索の意味合いも兼ねています。

③債権者・受遺者に対する債権申出の公告

上記の官報公告にもかかわらず、2か月以内に相続人が現れない場合には、相続財産管理人は、遅滞なく債権者や受遺者に対して2か月以上の期間を定めて被相続人に対する債権があれば、その旨申し出るよう公告します。上記の公告同様、この公告にも相続人捜索の意味が含まれています。なお、知れたる債権者には各別に債権申出の催告をする必要があります。

④相続財産清算・弁済

2ヶ月以上の公告期間が満了すると、管理人は債権者・受遺者に対して弁済を開始します。この清算手続きにより財産がなくなれば手続きは終了し、残余財産があるときは次の手続きに進むことになります。

⑤最終の相続人捜索の公告

6ヶ月以上の期間を定めて相続人捜索の公告を行います。 相続人不存在を確定させるための最後の公告となります。

⑥相続人不存在確定

6ヶ月以上の期間が満了し、なお相続人が現れない場合は相続人の不存在が確定します。

特別縁故者による財産分与の審判

被相続人に法定相続人がいない場合、もしくは相続人はいるが、その全員が相続放棄をしている場合には、被相続人と特別の縁故関係にあった方は、家庭裁判所に申し立てて、相続財産の全部または一部を請求することが出来ます。
  特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者を指し、内縁の配偶者は、これに該当するといえます。   なお、特別縁故者として財産分与を受けるには、まず法的に相続人が不存在であることを確定するともに、被相続人の負債等の清算を行わなければなりません。相続人の不存在が確定され、かつ相続財産と負債を清算してもなお遺産が残っている場合に初めて、特別縁故者は、財産分与を請求することができます。
この財産分与は、相続人不存在の確定から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てる必要があります。

手続の流れ

①相続財産管理人の選任申立~⑥相続人不存在確定

相続人不存在の確定から3ヶ月以内に、特別縁故者は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

②特別縁故者への財産分与の審判

家庭裁判所は、申立人を特別縁故者と認定したときは、その者に残余財産の全部または一部を分与することができます(もらえる財産の内容や程度についての最終的な判断は申し立てを受けた家庭裁判所が行うことになります)。分与の審判が確定すると、残余財産は特別縁故者に引き渡されます。
※審判により特別縁故者と認められなかった場合には、残余財産は国庫に帰属することになります。